地中海食と心臓病
更新日:2018/03/08
食用油も、健康を左右する要素の一つだ。
テレビCMでは、健康に良い油というのが喧伝されているが、実際、油の成分によっては、健康に良いものと悪いモノがある。
さらに10年前、20年前には健康に良いとされていた油が、今では健康に悪いと言われていたりする。
油に関しては、10年ぐらい経つと、それまでの常識がひっくり返ったりすることが多いのだ。
これは20世紀後半に、食用油と健康に関する研究が進められ、新しい発見が続いたからだ。
アメリカでは心臓病で死ぬ人が多く、その原因が油(脂質)にあるのではないかとして、様々な研究が進められた。
キッカケは、第二次世界大戦後に始まった、日米欧の6カ国の食事と心臓病との相関関係を調べる研究だった。
心臓病疾患の患者が少ないスペインやギリシャ、イタリアなどの地中海沿岸では、動物性脂肪の摂取量が少ないことが分かり、動物性の脂肪より植物性の脂肪が良いと考えられたのだ。
「地中海食が健康に良い」というのも、実はここからきている。
そして、動物性脂肪よりも、植物性の油が良いとされ、植物性油ブームが起こった。
また肉よりも穀物の方が良い、などという話になった。
心臓病患者の増大に頭を悩ませていたアメリカ。
日米欧の6カ国研究で、心臓病と動物性脂肪の摂取量に相関性があるとして、動物性脂肪を植物性脂肪や穀物に置き換えることが推奨された。
植物性油のメーカーは、これ幸いと植物性油の健康効果を謳い、業績を伸ばした。
ところが植物性油の摂取量が増え、心臓病が減ったかというと、話はそう簡単では無かった。
というのも一口に食用油と言っても千差万別で、成分も材料によって全く違っていたのだ。
牛や豚、鶏などの動物由来の油は、似たり寄ったりの成分なのだが、植物性の油はもの凄く違う。
そのせいか、アレルギーが増えた。
実は植物油と一口に言っても、アレルギーを酷くする油と、アレルギーを抑制する油、そしてどちらでもないタイプの油の3種類あったのだ。
そして70年代から80年代にかけて、健康に良いと散々宣伝されていたリノール酸入りの油は、実はアレルギーを酷くするタイプの油だった。
植物油には、オリーブオイル等のような単価脂肪酸を中心とする油や、オメガ3、オメガ6、オメガ9というタイプの油がある。
このうち、リノール酸などのオメガ6タイプの油は、アレルギーを酷くしてしまうことが分かってきた。
また、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸も、問題があることが分かってきた。
マーガリンやショートニングなどは、魚油や植物油に水素添加して硬化させた硬化油なのだが、その過程でできるトランス脂肪酸が健康に良くないのだ。
さらに酸化した油に発生する過酸化脂質も、健康に良くないと分かってきた。
植物油は酸化しやすく、酸化した油は健康に悪いため、現在では、植物油よりも動物性脂肪の方が良いという主張も行われるようになった。
こういった様々な研究結果によって、10年ごとくらいにまとめられ、その結果、植物油に関しては、10年前や20年前とは全く正反対のようなことになっているわけだ。