セリンと天然保湿因子NMF
更新日:2018/05/27
セリン (serine) とは、αアミノ酸の一つだ。
タンパク質は20種類のαアミノ酸が70個以上組み合わさってできていて、9つの必須アミノ酸と、11個の非必須アミノ酸の二つに分類される。
必須アミノ酸というのは、人間の体内で合成できないアミノ酸で、食品から必ず摂らないといけないタイプのアミノ酸だ。
必須アミノ酸は、肉や魚、卵などにバランス良く含まれている。
ただ米や小麦などの穀物には「リシン」というアミノ酸が少ないため、リシンが多い大豆などの豆類と食べ合わせないとバランスが悪い。
体内でのタンパク質の合成量は、一番不足している必須アミノ酸の量で決まるので、一つでも少ないアミノ酸があると、その量で全体量が決まってしまうのだ。
今回のテーマのセリンは非必須アミノ酸で、必須アミノ酸を材料にして体内で合成できるので、強いて摂る必要はない。
セリンも、グリシンなどから体内合成できるため、特にセリンを多く含む食品を摂らなくても構わない。
もちろん体内で合成できると言っても、食べれば吸収されるし、吸収された非必須アミノ酸も、タンパク質の合成材料として使われるので、無駄にはならないが。
セリンは体内で生合成できるアミノ酸で、特に注意をする必要が無いアミノ酸だ。
ところが皮膚に関して言えば、セリンは非常に重要な働きをしているアミノ酸だ。
セリンはセラミドの原料の一つで、パルミチン酸とセリンからセラミドが作られる。
また、セリンは天然保湿因子(NMF)の成分の一つで、乾燥肌にも関係が深い。
天然保湿成分(NMF:Natural Moisturizing Factor)とは、簡単に言うと、水分を肌に留めておくための成分だ。
皮膚の表面の表皮は、ラメラ構造と言う、セラミド脂質層と水分の層が交互に20~30層も重なる形になっている。
しかしセラミドはあくまでも脂質であり、水にも油にも溶けない。
セラミドは水酸基を2~3個持っているので、多少の親水性はあるのだがが、水分を肌に留めておくほどの力はない。
そこで水分を肌に留めておくために働いているのが、天然保湿成分だ。
天然保湿成分の40%が遊離アミノ酸で、ピロリドンカルボン酸(PCA)と乳酸塩が12%ずつ、そして7%が尿素となっている。
ピロリドンカルボン酸(PCA)は、保湿力が高い成分で、グルタミン酸から作られる。
一方、遊離アミノ酸の中で一番多いのが、親水性アミノ酸のセリンで、水と馴染みやすい。
セリンの他には、グリシン、アラニン、スレオニン(トレオニン:親水性)などが含まれるが、3割はセリンになっている。
遊離アミノ酸とピロリドンカルボン酸は、フィラグリンというタンパク質の分解物で、これをうまく分解できるかどうかも、肌の保湿に関係があるらしい。
因みにセリンを多く含む食品には、乳製品や大豆製品、カツオなどがあげられる。