プロテインは腎臓を悪くするのか?
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プロテインを摂ると、腎臓が悪くなると言うのは本当か。
まず根本的な話だが、腎臓機能を低下させないためには、血管に優しい食事が大事だという。
というのも腎臓は毛細血管を用いて血液を濾過し、老廃物や有毒物質を尿として排泄する器官だからだ。
腎臓の毛細血管が傷む→毛細血管が機能しなくなる→腎臓の機能が落ちる、と言う関係にある。
なので毛細血管にダメージを与えることを、極力避けるのが肝腎要(かんじんかなめ)だと言うことだ。
因みに腎臓を悪くすると言われているのは、次の三つの病気だという。
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
この三つはそれぞれ、別の方法で毛細血管を傷め続ける。
まず高血圧になると、腎臓の毛細血管に対する圧力が高くなるため、傷みやすくなる。
次に糖尿病になると、血液中のブドウ糖濃度が高くなり、毛細血管内のコラーゲンなどのタンパク質とブドウ糖が結合し(糖化)、血管が脆くなってしまう。
さらに脂質異常症があると、血栓ができやすくなって、血管が詰まるからマズい。
と言うことで、これらの三つを同時にケアすることが、腎臓をいたわる事になるのだという。
ってことは、プロテイン、関係ないんやない?ってことなんだが、なぜ悪いんだ?
塩分制限、糖質制限、カロリー制限が必要な理由
腎臓を悪くしないために、塩分制限、糖質制限、カロリー制限が必要だ、というのは理解できる。
まず高血圧を避けるため、塩分制限が必要だ。
塩分を取り過ぎると、体内の塩分濃度が高くなるため、我々の身体は水分を多く摂って濃度を下げようとする。
その結果、血液量が増えて血圧が上がってしまい、血管に負荷が掛かるから、塩分は制限すべきだ。
次に糖質(炭水化物)をたくさん取り過ぎると、血糖値が上がり、ブドウ糖や果糖が血管と結合して脆くなるわけだから、糖質も控えるべきだというのも分かる。
さらに太りすぎていると、その過剰な体重が身体のあちこちで余分な負荷をかけるし、脂質異常も起こしやすくなるため、カロリーも制限して痩せることも重要だ。
タンパク質制限は、何故必要なの?
三つの疾病が腎臓を悪化させるという理由は、よく分かる。
でもプロテインは、ここに入っていないわけだから、実はタンパク質が腎臓を悪くする原因ではないってこと?
なのになぜ、慢性腎臓病になると、タンパク質を制限するのか?
これはただ、「腎臓を酷使しないように、余分なタンパク質を摂るな」という事らしい。
タンパク質は胃腸で分解され、アミノ酸やペプチド(低分子タンパク質)という形で吸収されて血液の中を流れる。
そして身体の様々な部分で細胞に取り込まれ、筋肉になったり、酵素を合成したり、免疫力を支えたりという仕事をする。
そうして使われたタンパク質は、再びアミノ酸に分解され、血液中を漂って、また再利用される。
これを「アミノ酸プール」と呼んだりするのだが、残念ながらアミノ酸を永久に使い回し続けることは出来ない。
体中を巡っているアミノ酸も壊れたり、ブドウ糖と反応して糖化されたりするから、ダメになったアミノ酸は分解されて尿素が作られ、尿として排出される。
ここまでは正常な肉体の範囲なのだが、もしタンパク質を必要以上にたくさん摂ると、どうなるか。
余分なタンパク質も同じようにアミノ酸として吸収され、血液中を流れるのだが、アミノ酸が多すぎても貯蔵しておくことが出来ないため、肝臓で分解されて尿素が作られ、排泄される。
つまり余分なタンパク質を摂ると、肝臓と腎臓が余分に働かせることになるため、良くないと言うわけだ。
あれ、でもなんで、これがプロテインパウダーが良くないと言う話になってしまうのか?
プロテイン肯定派の医師の意見
【うそ?本当?】プロテインは腎臓に悪い?医師が医学論文を解説
ガン専門の外科医の佐藤典宏氏。
【抜粋】ガン患者さんには、体重1kgあたり1.2グラムから1.5グラムのタンパク質の摂取が必要で推奨。
食事から摂れない場合は、ホエイプロテインなどで補うべき。
2019年に発表された、プロテインを積極的に摂っているスポーツクラブの会員100人あまりを対象とした調査では、プロテイン摂取量と尿アルブミン量に相関関係は認められなかった。
「プロテインは腎臓に悪いし体に毒だから飲むな!」という意見について、考えを話します
北條元治氏、 形成外科医・肌の再生医療の専門家。
【抜粋】タンパク質は三大栄養素の一つで、重要な栄養素。
タンパク質やアミノ酸は、炭水化物や脂質と異なり、体内に貯蔵しておくことが出来ないため、毎日の補給が必要。
一日数十グラムのプロテインを摂っても腎臓には問題は無く、そういう研究結果も出ている。
「プロテインは体に悪いから飲むな」という意見に対しての私の考えを話します。
高須幹弥氏。高須クリニック名古屋院院長。筋トレマニアで、10年以上、毎日タンパク質を140グラム摂っている。
【抜粋】医者にも、プロテイン否定派とプロテイン推奨派がいて、自身はプロテイン推奨派だ。
- 自身は一日に3回、プロテインを飲んで筋トレする生活を10年以上続けているし、それが健康や肥満の予防になっていると考えている。
- 腎臓や肝臓の予備機能が低い人には、タンパク質の摂りすぎは注意が必要だが、プロテインパウダーが特に悪いわけでは無い。プロテインを人工のタンパク質と呼ぶこと自体、おかしい。
- ホエイプロテインは牛乳の乳清を濃縮して作られるもので、普通の食品だし、低脂肪で健康的。
- 体重1kgあたり2.8グラム以上のタンパク質をとり続けると、腎結石が出来やすくなるというデータは存在する。
腎臓内科医の解説
最後に、腎臓内科医アサモリ氏の動画。専門は腎臓・糖尿病。
特にプロテインを敵視しているわけではないが、プロテインパウダーが腎臓内科医界隈では要注意食品だと考えられていることは確かみたい。
腎臓病とタンパク制限の関係をお話します【腎臓内科医が解説】
【抜粋】
慢性腎臓病ステージ | eGFR値 | 体重1kg当たりのタンパク質摂取量 |
---|---|---|
ステージG3a(保存期腎不全) | 45-59 | 0.8-1.0g/kg.day |
ステージG3b(保存期腎不全) | 45未満 | 0.6-0.8g/kg.day |
血液透析(末期腎不全) | 0.9-1.2g/kg.day | |
腹膜透析(末期腎不全) | 0.9-1.2/kg,day(実際はもう少し多めに設定) |
タンパク質制限の目的
- 腎不全の進行を抑えるため
- 尿毒素(尿素窒素)の蓄積の予防
腎不全の場合、尿毒素の排泄の能力が落ちているので、溜まらないようにタンパク質を制限する。
実際の食事指導の例
同じ体重で、同じeGFR値であっても、日々の活動量で指導するタンパク質摂取量が変わる。
日々の活動量が多い人に対しては、タンパク質制限量の上限を指導するし、超えることもある。
日々の活動量が少ない人に対しては、タンパク質摂取量の下限あたりを指導し、それ以下にならないように気をつける。
その人に必要なタンパク質の量は、定期的に蓄尿検査(1日分の尿を全部集めての分析・尿アルブミン量)を行い、決める。
プロテインパウダー、プロテインサプリは、健康診断の値を見ながら使うのであれば、全く問題は無い。
健康に良さそうだからといって、プロテインをガバガバ飲んで必要以上に摂取するのは危険。