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技アリの身体になる。とうとう購入!

技アリの身体になる』と言う本を、とうとう手に入れた。
これはどういう本かというと、古武術研究家であり、最近は介護のための身体使いなどを指導されている、甲野善紀(こうのよしのり)さんの、お弟子さんが作った本である。
で、古武術研究家のお弟子さんが、どういう本を作ったかというと、稽古法のTIPS(ティップス)を書いた本だったりする。
甲野善紀さんが以前開かれていた道場である、ショウセイカンで稽古に励んでおられたお弟子さんが、自分なりに稽古を工夫された内容を、一冊の本にしたわけだ。


技アリの身体になる


書は言を尽くさず、言は意を尽くさず...という。
書いたモノは、言いたいことを書き尽くすことはできない。言うという行動も、言いたいことを言い尽くせない。という意味である。
体を使ったワザというのも、実は、筆舌には尽くしがたい。説明だって、言い尽くせない。
だから武術の師匠は、とにかくやってみせる。そしてやらせてみせる。
見て覚えろって言うわけだ。

ところがそうなると、真似のうまい人間しか、覚えられないし、また、外側の動きから、身体の内側の動きが読めるような弟子しか、師匠のワザを会得することができない。これでは、武術が伝わらない。
そこで、まず、型(かた)というものが伝わっている。型というのは、いくつかのワザを連続して行うモノである。実際にその型を実践で使うわけではなくて、その中に含まれているワザが使われるわけである。
言ってみると、DNAの二重螺旋のようなものである。使うときだけDNAがほどけて、そこの一部分だけの情報からタンパク質ができるようなものである。

空手にも剣道にも、こういう型というモノがある。柔道なんかも、乱取りばかりやっているようだが、実は型もあるらしい。合気道は、無かったように思う。合気道の源流である大東流も、少なくとも私が教わっている会派では、ない。
いくつかのワザを連続して練習するようなワザではないと言うことらしい。だから武術に型が必ずあるというわけではない。

太極拳のような中国武術にも、多くの門派にワザをつなぎ合わせた套路(とうろ)と言うモノがあるが、やはりそういうものがない門派もある。型というのは、基本的にはワザや技術の伝承のためのモノであって、型では伝承できない継投のワザを使う武術は、型を作っていないのかもしれない。

だがしかし、そういう武術でも、他の方法で伝承を図る。ヒントである。
要訣(ようけつ)とか、口伝(くでん)とか、拳歌(けんか)とかいった、言葉や歌によって、伝承者にヒントが与えられる。弟子はそのヒントを理解し、自分のワザに魂を入れていくわけである。

さて話は戻って、甲野善紀さんである。
甲野善紀さんは、元々合気道をやっておられた方であるが、合気道ではなく、江戸時代の剣豪小説や武術家の話に出てくる動きに魅了された方である。
だから甲野さんの稽古場であるのショウセイカンは、特定の武術をやっているわけではなくて、古武術の動きを稽古されていたらしい。となると、型もなければ、要訣などの口伝もない。
ビデオは90年代から何本か出されていたし、最近ではNHKで2ヶ月人間大学という講座で古武術の話を語ったDVDをはじめ何本も出ているが、結局、基本の基本がよく分からない。
だから、一体普段は何をやっているのだろうと、思っていたが、その一端を垣間見ることができるのが、この本である。

読んでみると、中身はハッキリ言って、何にもない。武術的な動きに興味のない人には、おそらく体操ですらないだろう。
何しろ、手首と肘をしっかり伸ばして小さく動かすとか、足首をしっかり曲げてヒザもしっかり伸ばして動かすとか、そういう本当に『何の意味があるねん?』と言ったことしか書いていない。
何かのコツとか、そう言うことすらも書いてないのだ。ただこうする、と書いてあるだけである。
だから、この本を買うのには、躊躇した。たった1500円だけれど、1500円の価値もあるのかしらん?という感じだったからである。
でも、ついに手に入れた。そして実践しだした。
甲野善紀さんの他のビデオやDVDでは知り得ないノウハウやヒントがこの本にはあるように思う。
ただヒザをあげるというだけでも、何分もやった。なんか不思議な感覚である。
続ける。

技アリの身体になる

この書は武術における勝ち負け、技の成否など斬り捨ててしまっている。
何を目指しているのか、というと古の武芸者が到達した境地そのもの
かも知れない。
でもそんな境地は幻想でしかない。
だけど、身体の感覚を開拓していく、という旅は非常に奥深く幅広い
ものである。でも、その広い広い世界を知らず、または朧気に勘づいて
いても、最初の一歩の踏みだし方が解らずにいる人はとても多い。
でもその一歩は、とても身近なものであったりする。
それに気づけば、とりあえず最初の一歩は踏み出せるのかも知れない。
この書は、その最初の一歩たる「気づき」のきっかけとする事だけに
作られた稽古素材の数々を紹介している良書である。
これを読んで得る者と言えば、感覚の旅への第一歩だけ。
実利的なものは何一つなく、一歩踏み出させてしまえば後は
放ったらかしなのだが、今までであれば仲間内の会報か自費出版
で終わっていたであろう情報の価値が認められ、公に出版された
事も評価したい。

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